2011年11月20日

スキンバリアがアトピー性皮膚炎の症状に関連する

過去に「アレルギー反応が先か、アトピックドライスキンが先か」という議論があったが、90年代からあったバリア機能の欠陥という考え方が今世紀に入って遺伝子レベルで証明されてきており、現在の最先端医療ではこれに倣っている。

90年代に角質層に存在するセラミドという細胞間脂質が少ないという調査報告があり、セラミドの生成に関わる遺伝子が注目された。

セラミドは顆粒細胞内で生成されるが、同じく顆粒細胞でケラチンを束ねているフィラグリンというタンパク質の欠陥が判明、原因遺伝子が06年に特定された。

顆粒細胞は代謝により表皮側にせり上がって角質細胞になるが、この際放出されるセラミド量が少ない為、角質は乾燥して隙間が出来易くなる。
この隙間から健常者ならば遮断出来る筈の異物に進入され易くなり、抗体が反応して炎症(痒み)となることが06年までに数度行われた実験によって証明されている。


個々人の体質や環境によるが8割方の患者は、繰り返される異物進入に対し、免疫系が即応体制を整えて抗体を増産、アレルギー体質化する。
またセラミドは細胞同士を接着してもいるため、角質が剥落し易く厚みのある角質層を形成出来ない。
このような薄い角質層は外部の刺激に対して敏感であり、痒みの一因になると考えられている。

顆粒層及び角質層の異常に起因するアトピックドライスキン、即ちバリア機能の欠陥という皮膚の生理学的異常の分子レベルの解明が進んでいる。


遺伝子の解析により、マスト細胞、好酸球にIgE抗体を結合させるレセプターや、サイトカインのうちアレルギーの炎症に関与するものの遺伝子が集中している遺伝子座がアレルギーと関連していることが明らかになっている。

スキンバリアの破たんがアトピー性皮膚炎を誘発することは昔から指摘されていた。中でもフィラグリン(Filaggrin)の発現不全がアトピー性皮膚炎の発症しやすさと関連するということは1980年代から指摘されていたが、実際にその遺伝子変異とアトピー性皮膚炎との関連性が遺伝子解読によって確認されたのは2006年3月のことである。

似たような遺伝子配列の繰り返しを持つ巨大な分子であるFilaggrinは遺伝子配列を読み取ることが難しかったためにそれだけ遅くなってしまった。

一方で、Filaggrinなどの分子はさておいて皮膚バリア機能の個人差について、いくつかの数値の計測による比較での相対あるいは絶対数値化が試みられていた。なかでも経皮水分蒸散量(Trans-Epidermal Water Loss; TEWL)は比較的計測しやすいことと、コントロールが取りやすいことから、性別、年齢、人種差、基礎疾患、生活状態などの様々な条件を超えて、皮膚バリア機能の評価の方法として用いられているものである。
治療の上でスキンバリアの保護を考えればどのような方法があるか考えてみよう。

皮膚表面を構成するのは表皮が作るたんぱく質、そこに蓄えられるセラミドとw水分、そして皮脂腺が作り出す脂分である。

これらは互いに補完し合ってバリアを構成し、それぞれが特異な機能を発揮することで総合的に様々な分子の侵入を防ぐ。


それを考えると、保湿だけでも、皮脂だけでも、たんぱく成分の補充だけでも不十分であり、これらを総合的に補充してやること、あるいはその患者の持ち皮膚の欠陥が明白であればその分子を補完することが理想である。

その意味では、最終的には遺伝子診断による補充療法の選択がなされるべきで、その理想に到達するにはあと10年ほどは必要ではないかと思われます。
posted by 東出孝治 at 21:58| Comment(0) | アレルギー | 更新情報をチェックする

2011年07月01日

アレルギーとは

厚生労働省の調査では、日本人の3人に1人が、皮膚・呼吸器・目鼻にアレルギー症状があることが明らかになりました。気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性結膜炎などが代表的な「アレルギー性疾患」です。

アレルギーとは、日本語で言うと過敏症です。接触した原因物質(アレルゲン)に対して、体が過敏に反応することを言います。人間の体には免疫という防衛機構が備わっています。これは細菌やウイルスといった外敵が体内に入り込んだときに体を守るために働くのです。免疫系が細菌やウイルスといった微生物と闘うときには、身体にいろいろな症状を起こすことで微生物を排除しようとします。例えば風邪の時の症状を考えてください。熱が出て、咳・痰が出て、鼻水が出て、時には下痢をする。発熱することで熱に弱い細菌を弱らせます。咳や痰・鼻水は気管支や鼻の粘膜にいる微生物を外へ出す反応です。下痢も腸の粘膜にいる細菌や微生物を排除するために起こっています。

ところが、本来外敵でも何でもない、食物、ダニ、花粉、ペットなどのアレルゲンが体の中に入ったときに免疫系が「外敵が来たのかな?」と勘違いして反応が起こってしまうのがアレルギー反応です。この勘違いの反応が起こりやすい人をアレルギー体質、またはアトピー素因があるといいます。アレルギーは免疫が非常に関与し、本来、生体防御に働くべき免疫が過剰な過敏反応を起こし、自分に障害を与える状態をいいます。

体内に進入した異物を検出すると顆粒を放出し、体内のアレルギー反応と局所的炎症反応の引き金役となるのが肥満細胞(mast cell)といいますが、この細胞は普段は働いていません。
ところが外部から侵入してきたアレルゲン(抗原)に対し、人体はIgE抗体と呼ばれる抗体を作って反応します。
IgE抗体は、原因となるアレルゲンとの接触を繰り返すうちに肥満細胞と結合し体内に蓄積されていきます。この蓄積が一定の水準に達すれば、症状がでる条件が整い、この状態で再びアレルゲンに接触すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます。これらの化学伝達物質の作用によってさまざまなアレルギー症状が現れてきます。

IgE抗体は、健康な人の体内にはごくわずかしか存在しません。ところが、アレルギーが起こっている人の場合には、アレルゲンに対して、IgE抗体をたくさん作り、その後、アレルゲンが再び入ってくるとアレルギー反応を起こします。IgE抗体を作りやすく、アレルギー疾患になりやすいアトピー素因という体質があります。
アトピー素因がある人も、すぐにアレルギーを起こすわけではありません。免疫系は、最初にアレルゲンを「吸い込む(鼻・のど・気管支の粘膜への接触)」、「食べる(胃腸の粘膜への接触)」、「触る(皮膚への接触)」など粘膜面などへ接触して体内に入って来たときは、「これはなんだろう?覚えておこう」で終わってしまいます。

その後何度も繰り返しアレルゲンに接触することによって、「これはなんだろう」から「こいつは敵だ!」と誤って反応してしまうのです。アレルゲンに何度も何度も接触することで免疫系が「敵への反応の仕方」をしっかり学習してしまうんですね。 何回も接触していてもなにも起きなかった人が、ある時突然、アレルギー症状が出る、ということがあります。接触する回数が多くなればなるほど、身体が学習する回数も上がり、アレルギーを発症する確率が上がるのです。

アレルギーは昭和40年代から欧米を中心に出現してきた病気で、国民3人に1人が持っている文明病と言われています。いったい現代は、アレルギー出現以前とどこが違うのでしょう?

以下のような事柄が考えられます。
1.車の排気ガス、ダイオキシンなどによる大気汚染
2.食品添加物や合成化学物質の日用品(建材、シャンプー、歯磨き粉、洗剤など)
3.農薬や殺虫剤、除草剤などの氾濫
4.電気や電波、TVなどの電磁波などの影響

シックハウス・シンドロームといわれる「化学物質過敏症」や日常使用する商品に含まれる環境ホルモンによる健康障害など、人間を取り巻く環境もますます厳しくなりました。しかし、アレルギー症状の治療法は、現在ではまだ完全な解決に至っていないのが現状です。「なぜアレルギーになったのか?」を考えることも重要です。
アレルギーと免疫

アレルギーの原因として、卵、大豆、牛乳などの食べ物や、花粉、ハウスダスト、ストレス、遺伝的要素などが考えられます。しかし、昔からある花粉や食べものがなぜ最近になってアレルギーの原因といわれるようになったのでしょう。実は近年急速に私たちの生活内に増えて来た農薬、食品添加物、抗菌剤、殺虫剤、ホルマリンなどの化学物質、そして排気ガスなどによる空気汚染が関与していることが医学的にもわかってきました。アトピー性皮膚炎などのアレルギーの真の原因は化学物質にあり花粉やハウスダストは単なる誘因物質と考えられます。免疫学的には、ウィルスや細菌などに対する抗体産生機序(抗体のつくられるしくみ)と、ダニ・花粉・食べ物などに対する抗体産生機序との違いが分かってきました。

医学的には複雑なメカニズムになっているのですが簡単に説明すると、ウィルスや細菌が体内に侵入した場合、リンパ球の一種であるヘルパーT細胞のT型が刺激され、インターフェロンの働きで、ウィルスや細菌に対する抗体を作ります。次に同じウィルスや細菌が体内に侵入してきた場合、その抗体がウィルスや細菌と反応して攻撃しまので、はしかに一度かかると二度とかからないのはこのためです。

一方、ダニ・花粉・食べ物のたんぱく質が体内に侵入した場合は、リンパ球の一種であるヘルパーT細胞のU型が刺激され、インターロイキンの働きで、ダニ・花粉・食べ物などの抗体(IgE抗体)を作ります。そのためにダニ・花粉・食べ物のアレルギーによる、アトピー性皮膚炎・喘息・花粉症などのアレルギーが生じます。ちなみにこのインターフェロンやインターロイキンのことをサイトカインと呼びます。

ヘルパーT細胞T型とU型は互いに抑制しあっており、例えばアトピーの人が風邪をひいて高熱を出したとき、湿疹や痒みが治まり、風邪が治ると、再び湿疹や痒みが現れるといったことがあります。これは、風邪のウィルスに感染したことにより、一時的にヘルパーT細胞T型が強まり、ヘルパーT細胞U型が抑制されたと考えられます。

農薬を使った農作物、防腐剤などの食品添加物を使った加工食品、抗生物質を大量に使った畜産物や魚介類、塩素消毒された水道水などにより、食べ物や飲料水から細菌などの微生物が体内に入らないようにされています。食べ物や飲料水の細菌はすべて悪いものではなく、体にとって有用な微生物も多いのです。以前は、どろんこ遊びをして、鼻水をたらしている子供たちが大勢いました。これは、常にある程度のウィルスや細菌に感染している状態であり、ヘルパーT細胞T 型の活性が強まり、ヘルパーT細胞のU型の活性を弱めていたのです。つまり細菌感染の時には、違う細胞成分が優位になっており、そのことから、細菌、雑菌に多く触れている子供の方がアレルギーを起こしにくかったのではないか、といわれています。

最近では、生活習慣の悪化を含む、様々なストレスや生活環境内での防腐剤・消毒剤・抗菌剤等を多く使うようになってきたため、ヘルパーT細胞T 型の活性が弱まり、ヘルパーT細胞U型の活性を抑制できなくなり、ヘルパーT細胞U型の活性が強くなってしまいました。その結果、以前はアレルギー反応を示さなかった、ダニ・花粉・食べ物等に、過敏に反応することが増えたのです。本来免疫細胞は細菌やウイルスなど病原体から身を守るために働くものです。しかし、抗菌剤や薬剤などに頼り細菌やウイルスを排除しすぎ、免疫細胞のありあまった力が花粉やダニなどに振り向けられてしまったことも原因です。

以上のことからアトピーなどのアレルギー疾患を改善するには、ヘルパーT細胞T型の活性を強め、ヘルパーT細胞のU型の活性を抑制すればよいことがわかります。アトピー性皮膚炎の湿疹症状やステロイド軟膏中止後の離脱症状は、よい意味で皮膚に細菌感染を起こし、ヘルパーT細胞T型の活性を強めようとしているからなのです。その結果、ヘルパーT細胞U型の活性を抑制し、アトピー性皮膚炎を根本的に治そうとしています。
これが自然治癒力であり、正常な自律神経の働きです。自然治癒力は病気を治そうとする力ではありますが、病気の症状そのものが自然治癒力の現れでもあるのです。このように身体が正常な免疫システムへ戻し、アトピーを治そうとそうとしているところへ、ステロイド剤を含む薬剤や酸性水等を長期間使用することにより、皮膚の炎症を抑えたり、細菌を殺してしまうと、ヘルパーT細胞T型の活性を弱めてしまいアトピー性皮膚炎の根本的治癒にはなりません。更に、ステロイド剤を含む薬剤は、ヘルパーT細胞U型の活性を抑えることで、炎症や湿疹・痒みを軽減します。その結果、ヘルパーT細胞T型とU型両方の働きが低下し、体全体の免疫力が弱くなってしまいます。サイトカインとアレルギーの相関関係は研究がすすんでいます。ステロイド剤などの薬物抑制に依存しない治療方法が解明される日も近いことでしょう。
posted by 東出孝治 at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | アレルギー | 更新情報をチェックする
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