2014年04月20日

無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が止まる病気です。
Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、「SAS(サス)」とも言われます。
医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸です。
寝ている間の無呼吸に私たちはなかなか気付くことができないために、検査・治療を受けていない多くの潜在患者がいると推計されています。
この病気が深刻なのは、寝ている間に生じる無呼吸が、起きているときの私たちの活動に様々な影響を及ぼすこと。気付かないうちに日常生活に様々なリスクが生じる可能性があるのです。

主な症状
睡眠中の酸素不足による脳や身体へのダメージ
本来、睡眠は日中活動した脳と身体を十分に休息させるためのもの。
その最中に呼吸停止が繰り返されることで、身体の中の酸素が減っていきます。すると、その酸素不足を補おうと、身体は心拍数を上げます。寝ている本人は気付いていなくても、寝ている間中脳や身体には大きな負担がかかっているわけです。脳も身体も断続的に覚醒した状態になるので、これでは休息どころではありません。
その結果、強い眠気や倦怠感、集中力低下などが引き起こされ、日中の様々な活動に影響が生じてきます。

睡眠時無呼吸症候群が招く合併症
心臓病、高血圧、糖尿病など様々なリスクが増加
睡眠時無呼吸症候群(SAS)には、様々な生活習慣病が合併します。
睡眠は量的にも質的にも満たされていることが望ましいのですが、SASによって適切な睡眠がとれていないと身体全体に関わる生活習慣病の発生や状態の悪化に影響を及ぼすようになります。
具体的な機序はまだ解明されていないものもありますが、特にSASによる「間欠的低酸素血症」と「睡眠の分断による交感神経の亢進」の2つが大きく関与していると考えられます。

間欠的低酸素血症
睡眠の分断による交感神経の亢進
2003年には「米国高血圧合同委員会第7次報告(JNC-7)」で、日本でも「高血圧治療ガイドライン2009」において睡眠時無呼吸が二次性高血圧の原因の一つと位置づけられました。さらに、2010年には日本循環器学会からの「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」が示され、循環器疾患と睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関連が重要視されています。

知らないうちに、あなたも予備軍に!?
日本国内の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の潜在患者数についての報告は少なく、詳細は明らかになっていませんが、治療が必要な重症度の方に限定しても300万人以上と推計されています。

しかしながら、現在欧米や日本国内でもっとも普及している治療法であるCPAP療法でも治療者数は現在わずか20数万人程度 (※1) 。
21世紀の「国民病」、あるいは「現代病」とも言われるSASですが、多くの方に見過ごされているのが現状です。
※1矢野経済研究所 在宅医療市場の現状と展望(2012年版)

現代の生活スタイルに潜む、知られざるリスク
現代病と言われる所以は、私たちの生活環境、中でも食生活の変化が関係しているため。
欧米的な高カロリー食により肥満が増えたことは周知の通りです。
加えて咀嚼回数の減少が顎の発達を妨げ、SASリスクを増大させていると考えられるのです。

はるか昔、縄文時代ではドングリや胡桃などの堅果類をはじめ、大麦や稗、あわなどの雑穀がよく食べられていました。堅い食べ物を食べるには相当の咀嚼が必要で、相応に顎も発達を遂げたと考えられます。
ところが、現代では堅い食べ物よりも軟らかい食べ物が好まれる傾向があります。ファストフードや食の欧米化などによる食の楽しみ・多様化が、一方では咀嚼回数の低下をもたらし、顎の未発達の一端を担っている可能性が考えられるのです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)にならないために

適正体重の維持
どんな病気にも共通しますが、太りすぎないことが重要です。SASは喉や首まわりの脂肪沈着がその発症に大きく関与します。今SASでなくても、顎の大きさによっては少しの体重増加がSASにつながる可能性も。
もし今太っているとしたら、適正体重を目指すよう心掛けましょう。すでに治療中の方にとっては、やせることは治療の一環になります。

お酒に注意
いつもはいびきをかかないのに、お酒を飲んだ日にはいびきをかいてしまう--そんな経験はありませんか?
アルコールによって筋肉が弛緩するためです。首や喉まわり、上気道を支える筋肉も例外ではなく、上気道が狭くなる結果、いつもはないいびきが生じるのです。
ただでさえ寝るときは筋肉が緩んでいますので、アルコールが加わればさらに無呼吸に陥るリスクを高めることになります。
定常的な寝酒などは控えるのが賢明です。

鼻症状の改善、口呼吸から鼻呼吸へ
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの鼻症状がある場合は、本来の鼻呼吸がしにくく口呼吸になるケースがあります。口呼吸の結果、鼻呼吸のときよりも咽頭が狭くなるため上気道が閉塞しやすい状態になります。口呼吸はSAS以外にも様々な病気との関連が示唆されているので、その意味でも鼻呼吸は重要です。
口呼吸をしている方には耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。

睡眠薬服用の注意
睡眠薬の多くは無呼吸症状を悪化あるいは助長させます。
自己判断での服用は避け、主治医とよく相談することが大切です。

寝姿勢の工夫
仰向けで寝るよりも、横向きで寝ると上気道の閉塞を軽減できる場合があります。
抱き枕などを使って横向きで寝られる工夫をしてみるのも良いでしょう。

多くの場合、SAS治療とは長い付き合いになります。
だからこそ、治療を始める前に自分のSASの重症度をきちんと把握しておくこと、治療の意義を十分に主治医と話し合っておくことが大切です。ご家族やベッドパートナーの理解も心強いでしょう。

治療について

治療方法には、症状を緩和させるもの(対症療法)と、根本的にSASの原因を取り除くもの(根治療法)とがあり、いずれも個々の患者さんの状態に合わせて最適な治療方法が選択されます。一概にどの治療方法が優れているということはなく、重症度や原因に応じた治療方法が適用されます。

CPAP療法
欧米や日本国内でもっとも普及している治療方法
「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字をとって、「CPAP(シーパップ)療法:経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれます。
閉塞性睡眠時無呼吸タイプに有効な治療方法として現在欧米や日本国内で最も普及している治療方法です。

CPAP療法の原理は、寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて気道を開存させておくというもの。
CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれます。

「鼻にマスクをつけて空気が送られてくる状況で眠れるものなのか?」と思われるかも知れませんが、医療機関で適切に設定された機器を使い、鼻マスクを正しく装着できているかどうかが重要なポイントです。そのため、医療機関に一泊入院して治療に適した機器設定を行う(タイトレーション)場合もあります。治療は毎日のことなので、使い方でわからないことがあればコツをつかめるようになるまで主治医や医療機関のスタッフに相談してみると良いでしょう。

マウスピース
睡眠時無呼吸症候群(SAS)を歯科装具(マウスピース)で治療するケースもあります。スリープスプリントとも言われています。下あごを上あごよりも前方に出すように固定させることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐ治療方法です。
作製は、SASについての知識があり、マウスピースや口腔内装置を作り慣れている専門の歯科医にお願いするのが良いでしょう。

マウスピースをつけて寝るだけ、と思うと手軽に思えるかも知れませんが、必ずしも全ての症例に効果的な治療方法というわけではありません。中等症までの閉塞性睡眠時無呼吸タイプに対しては比較的効果が見られやすい一方で、重症の方の場合には治療効果が不十分とされる報告もあります。重症度をきちんと把握し、主治医とよく相談した上で治療を始めるのが良いでしょう。保険診療の適用になるかどうかは歯科医にご相談下さい。

外科的手術
小児の多くや成人の一部で、SASの原因がアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効な場合があります。
UPPPという軟口蓋(のどちんこ)の一部を切除する手術法もありますが、治療効果が不十分であったり、数年後に手術をした部位が瘢痕化してSASが再発することが少なくありません。
また、米国では狭い上気道を広げる目的で上顎や下顎を広げる手術も行われていますが、日本でこの手術を行える医療施設は限られています。
posted by 東出孝治 at 18:02| Comment(0) | 睡眠 | 更新情報をチェックする

2011年07月01日

健やかな睡眠とは

夜型の生活習慣による生活リズムの乱れや、ストレスに満ちた社会を反映してか、不眠に悩まされる人が増えているようです。厚生労働省がおこなった睡眠に関する調査によると、現代人の5人に1人が不眠症など睡眠に関する悩みを抱えていることがわかっています。
また、この中で、10人に1人が長期の不眠で悩んでいるという深刻な状況が浮かび上がっており、特に20〜40歳代の働き盛りの年代に多くみられます。理由としては、多忙で睡眠時間が十分にとれないという社会生活上の理由が最も多く、次に多かったのが精神的ストレスでした。
家庭、学校、職場、ありとあらゆる場所でさまざまなストレスにさらされている現代人にとって、「不眠症」は生活習慣病の一つといえるかもしれません。

睡眠の役割は脳のクールダウンです。脳はエネルギー消費が高いため、非常に壊れやすく、もろい部分です。元気な脳に回復するためには必ず睡眠は必要です。眠っている間に昼間の学習を記憶として定着させたり、不要な記憶の消去も行なわれたりすると考えられています。熟睡した深い眠りのノンレム睡眠は「脳の眠り」ともいわれ、眠りについて1〜2時間で、一晩のうちで一番深い眠りに入ります。呼吸や心臓の拍動は遅くなり血圧も下がります。体内の熱を発散させるため発汗作用が活発になり深部体温が約1度下がります。脳波は深い睡眠状態に現れるデルタ波で、脳が休息しているので揺り起こしてもなかなか起きません。その後「体の睡眠」といわれるレム睡眠に入ります。レムとは急速眼球運動(RapidEyeMovement)の略で目玉が動き、呼吸、拍動も増加し、血圧も少し高く体温も上昇します。脳波は浅い睡眠状態に現れるシータ波が主で脳は目覚めているときに近い状態です。体の緊張は解け、夢を見ることも多い眠りです。
子供の成長・疲労回復・美容などに重要

健康な人の場合、ノンレム睡眠とレム睡眠は90分周期で一晩に4〜5回交互に朝まで繰り返されます。睡眠に入る前は体温が一日の中で一番高くなり眠気を催します。寝入りばなの3時間、最初の2セットが非常に大切な時間です。これは睡眠が免疫力の増強と深くかかわっていて、脳下垂体から新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞の間の情報を伝達するサイトカインのインターフェロンやインターロイキンなどがこの時間に血液中に活発に分泌するためです。成長ホルモンは体の補修にとっては非常に大切で、疲労を回復したり、怪我を修復したり、体全体のダメージを回復する重要なホルモンです。このホルモンは成長期の子供には非常に大切で、眠りの深い子供ほど成長ホルモンがたくさん分泌されます。寝る子は育つといわれるゆえんです。

また皮膚の新陳代謝も促進するので女性にとっての美容にも深く関わります。深い睡眠は、体温が下がっていく過程で得られるため、ノンレム睡眠で体温を下げ、レム睡眠で体温を上げるというリズムをつくっていきます。睡眠中に何回も起こる発汗作用は体温を下げ、深い眠りを得ようとするためのものです。睡眠は前半はノンレム睡眠が集中し、時間が経つにつれて後半はレム睡眠が長く続くようになります。そうしてだんだんと目覚めに向かっていきます。ストレスから体を守る糖質の調整、血圧を正常に保つ副腎皮質ホルモン、コルチゾールも睡眠中に増加を始め、朝方に最高となり、目覚めた後の活動に備えます。

不眠症の原因と解消・改善
夜眠れない原因をいくつか列挙してみるとリウマチなどの身体的痛みが伴う場合にも眠れなくなりますし、薬物の副作用、統合性失調症・うつ病などの精神性疾患から夜眠れなくなることもあります。高血圧の方も眠れないと言われる方が多いようです。睡眠時無呼吸症候群を伴やいやすいことや、治療に使われる薬の副作用、血圧を高めているストレスの影響などが考えられています。
夜眠っている間、交感神経は活動を休め、血圧は低くなるように調整されていますが、夜眠れないというストレスが血圧にも悪影響を与え、悪循環に陥るケースです。また、糖尿病があると、のどの渇きがあったり、夜トイレに行くことが多くなりがちで、これらが眠りを妨げることがあります。睡眠の時間が短かったり、深い睡眠がとれないと、インスリンの働きが悪くなり、血糖値は高まります。

眠れない原因が比較的はっきりしている場合と、ストレスなど原因がよく分からない場合がありますが、病気の人や運動不足、高齢者の不眠症には大きく2つのタイプがあります。ひとつは交感神経緊張型の不眠症です。生活の精神的なストレスや、病気が原因の痛みやしびれ、かゆみ、だるさ、冷え、こりなどの症状もストレスになり、その不安からますます眠れなくなるということがあります。すべての高齢者に当てはまるわけではありませんが、加齢につれて脳内の睡眠中枢の働きが衰えたり、眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌量も減少するため、全般に眠りが浅く、長続きしないと言われています。年齢とともに夜中のトイレの回数が増え、なかなか眠れないという方は下半身の冷えが原因です。下半身を暖めることで改善が期待出来ます。

もうひとつの原因は副交感神経緊張型の不眠症です。昼間に体を動かしたり、運動をしないため体が疲れないので眠れないというものです。血液の循環が悪くなる原因のひとつは筋力の衰えにあります。運動は筋力を発達させることで新陳代謝を促し、細胞の活性化を図ります。体のだるさで眠れない方は筋力低下による血行不良が考えられます。副交感神経緊張型の不眠症の対策はなんといっても運動をすることです。原因の異なる不眠症ですが、すべて睡眠薬や抗不安剤、睡眠導入剤で解決されてしまいます。こうした薬の働き方は、脳に働きかけて神経伝達ブロックという仕組みで眠らせてしまうやり方で、脳に働きかけるため、必ず興奮状態が残り、いずれも薬によって交感神経緊張型になってしまいます。睡眠薬の副作用は、日中の倦怠感や筋弛緩作用のための転倒、血栓や肝機能障害などと、常用は大変危険です。また依存性の強い薬なので、突然止めると飲む前より眠れなくなることもあります。薬による「不眠症の解消」という考え方は極力避けましょう。

良質な睡眠
私たち体温(体の中心の体温)は、日中は高く、睡眠中は低くなるというリズムがあり、夜になると中心の熱を全身に発散して冷まし、眠りやすい状態にします。ただしこの時に寝室の温度や湿度が高いと熱がうまく発散されず、寝苦しくなることがあります。
梅雨は夏ほど気温は高くないものの、湿度が高いために同じような状態になることがあります。

快適に眠るためには、梅雨から夏の間は、室温26度前後、湿度50〜60%を保つように工夫しましょう。同じ温度でも湿度が低くなると快適度が増すので、梅雨の時期は通気を心がけ、湿気を下げましょう。洗濯物やぬれたものは寝室に持ち込まない。観葉植物は多く置かないといったことの他、寝具についても次のようなことに気をつけましょう。湿気は寝苦しくなるだけでなく、ダニ(ダニは湿気の他、フケ、ホコリが好き)やカビの原因にもなるので、寝室や寝具は常に乾燥・清潔を心がけましょう。布団は、汗やフケなどで汚れやすく、ダニが発生しやすいので要注意です。
カビやダニ、室内の有害化学物質は、さまざまなアレルギー疾患を引き起こし、またせっかく病気やアレルギーの治療をしていても寝ている間にそれらを吸い込んでしまうようではいつまでたっても治りません。睡眠環境を整え、良質な睡眠で免疫力を強化することが健康維持への早道です。
posted by 東出孝治 at 02:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 睡眠 | 更新情報をチェックする
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